今回は、写真の「色飽和」について考えていきます。
色飽和とは、写真の中で色がべた塗りのようになってしまう現象のことをいいます。鮮やかな黄色や赤色、蛍光色のものを撮るときによく発生する現象です。
本来は、その色にも濃淡や陰影があったはずなのに、写真だとそれが描写しきれずにべた塗りになってしまう――それが色飽和と呼ばれるものです。
色飽和した部分は階調がなく、ほかより目立ちやすい傾向があるため、できるだけ避けたいところです。
……が、被写体によっては
- どうしても色飽和してしまうもの
- 色飽和をしないように撮るとかえって不自然になるもの
があります。
そこで今回はこの点について、考えていきます。
■色飽和についてはこちらの記事でくわしく解説しています。
色飽和した部分はなぜ目立つのか
さて、まずは「色飽和した部分がなぜ目立つのか」という点からみていきましょう。
これは主に次のような理由があります。
- 「べた塗り」の部分は色が強くみえる
- 蛍光色など派手な色が多い
それぞれについてくわしくみていきましょう。
「べた塗り」の部分は色が強くみえる
色は、階調やグラデーションがあるほどやわらかくみえます。
階調やグラデーションが少なくなる(大ざっぱになる)と、それらがあるものに比べてカチッとした印象になり、強くみえるようになります。
写真の補正では、写真をくっきりさせるために「コントラストを強くする」という操作がよく使われます。
これは、階調を減らし、明暗や濃淡の差を極端にする補正です。変化のなめらかさをなくす、「やわらかさをなくす」わけですね。
べた塗りは、いわば、その行き着くところです。色の明暗や濃淡の差をなくした状態です。つまり、色のなめらかさ、やわらかさのない状態――もっとも強い状態なんですね。
そのため、べた塗りになった部分は、階調のある部分より強くみえます。
たとえばこちらの写真。
赤とんぼの背中(羽根のすぐ後ろ)の部分をみると、赤がべた塗りになってみえます。色飽和しているためです。
他の部分が、それなりに階調を持った色になっているのに対し、背中の部分だけべた塗りなので、ここだけ浮いているようにみえます。
生き物はほとんどの場合、目にピントを合わせて撮ります。そうすると自然にみえることが多いためです。
が、この写真の場合は、色飽和した部分が目立っており、とんぼの目に視線が集まるのを邪魔しているような感があります。
べた塗りの部分が、写真のバランスを崩しているんですね。
蛍光色など派手な色が多い
色飽和しやすい色はおおよそ決まっています。
特に「あざやかな黄色や赤色」「蛍光色」あたりは要注意です。これらの色に共通するのは、彩度が高いこと。
とにかく色があざやかなので、色飽和していなくても画面内ではかなり目立ちます。そうした色が飽和すると、画面内でより目立つようになります。
主役以外のところでこれが起こると、その部分が主役より目立ってしまうことが多々あります。
色飽和した部分はその範囲が大きいほど、強く感じられます。場合によっては、主役を完全に食ってしまうこともあります。
色飽和とどうつきあっていくべきか
さて、色飽和はできるだけ避けたいところですが、先に述べたように
- どうしても色飽和してしまう
- 色飽和しないように撮るとかえって不自然になる
といったケースもあります。
幸い、今の時代は、写真を画面で見ることが圧倒的に多くなっています。
今、この記事を読んでいる方も、写真はパソコンやタブレット、スマホの画面でみるという方が多いかと思います。
色飽和した部分はプリントをするとものすごく目立ちます。書籍でもそうですね。
が、モニターや画面で見る場合は、色飽和した部分が緩和してみえる傾向があります。
閲覧環境に左右される部分はありますが、「プリントした時ほど気にならない」あるいは「ほとんど気にならない」ようにみえることもあります。
ですので、「モニターや画面でみるのならOK」という考えで色飽和につきあっていくのもアリかと思います。閲覧環境を想定して取り組んでいくという方法ですね。
まとめ
今回は「色飽和とのつきあい方」と題して、色飽和についてどう考えるかをお届けしました。
階調があるのに越したことはないので「できるだけ飽和しないように撮る」というのは、まずおさえておきたい点です。
「色飽和した部分はなぜ目立つのか」を知っておくと、いろいろな場面で役に立ちますよ。