デジタル一眼で撮った写真をみると、時々、色がペンキで塗ったように均一になっている箇所があるのに気づくことがあります。
上の写真でいえば、黄色い被写体の左端あたり。肉眼では、でこぼこや色の差がみえていましたが、写真ではずいぶんとのっぺりとしています。
これは、デジタル一眼で起こりやすい「色飽和」という現象です。というわけで今回は、色飽和について知ってみましょう。
色飽和とは
カメラで撮った時に、モチーフの色のグラデーションがなくなって、のっぺりとした描写になることを「色飽和」といいます。上の写真でしたら、赤とんぼの背中(羽根の付け根のうしろあたり)がわかりやすいところですね。
色が飽和した部分は、色をペンキをべったりと塗ったようになり、階調や立体感が感じられなくなります。「白とび」の色つきバージョンと考えるとわかりやすいでしょう。
白とびと同じく「絶対にダメ」という類のものではありませんが、飽和した部分があまりに目立つと、見る人もやはりそこが気になってしまいます。
デジタル一眼で写真を撮っていると、色飽和の問題に直面する機会が多くあります。その性質を知り、上手につきあっていきましょう。
色飽和はなぜ起こる?
デジタル一眼は日々進化していますが、それでも人間の目に比べると、色彩表現の幅や階調の幅が狭いのが現状です。人間の目ほど細かく「明るさや色の違い」を認識できないんですね。
そのため、人間の目では普通にみえているものでも、カメラでは表現しきれないケースが出てきます。その代表的なものが「白とび」や「黒つぶれ」、そして今回取り上げている「色飽和」です。
色に関しては、飽和しやすい色があります。それを知っておくと、対策がしやすくなります。
飽和しやすい色
「あざやかな黄色」「あざやかな赤」「ショッキングピンク」は、飽和しやすい傾向があります。これらの色は、肉眼ではふつうにみえていても、写真に撮ると飽和してしまうことがよくあります。
また、やっかいなことに、飽和した色はデジタル一眼のモニターでは気づきにくい傾向があります。パソコンなど、ほかのモニターでみて、あるいはプリントしてはじめて色飽和に気づくといったケースも多々あります。
飽和しやすい色を撮る時は、次のような対策がおすすめです。
色飽和の対策
彩度を下げる
色飽和はほとんどの場合、彩度を下げることで対策できます。
- カメラの設定で彩度を下げる
- 彩度の高いモード(風景、ビビッド、ポップアートなど)を使わない
特に今のカメラは、最初から「彩度が高め」に出るようにチューニングされている機種が多くありますので、上記の対策をするだけでもかなりの効果があります。
また、日差しが強い場合は「明るさを落として撮る」のもよい方法です。
先に述べたように、「デジタル一眼のモニターでは色飽和に気づきにくい」傾向があります。そのため、設定を変えて何枚か撮るのがおすすめです。
どうしても飽和する色
シーンによっては「肉眼でみた時点から飽和している色」があります。
たとえば、日差しが強い日に赤とんぼをみると、赤い部分が完全に飽和してみえることがあります。
また、明るいところでショッキングピンクのものをみると、肉眼でも階調がまったく感じられないケースもあります。
こうした「肉眼でみた時点から色飽和しているもの」は、カメラで撮っても飽和する可能性が高いです。シーンの選び方も重要、ということですね。
おしまいに
今回は、デジタル一眼で起こりやすい現象の1つ「色飽和」についてでした。「色が飽和しないように撮る」方法を覚えたら、色飽和の性質を利用してみるのも面白いものです。
たとえば「ディティールをみせなくていい部分は色飽和を起こしてもOK(あえて細かく描写しない部分をつくる)」といった使い方もできます。