前回の記事では、PENTAX KFをピックアップして「カメラの価格と位置づけ」についてのお話をしました。
今回はその続きです。
「エントリー機並みの価格なのに」という強み
2022年11月末に、リコーイメージングからPENTAX KFが発売されました。
本来なら「待望の新機種」といいたいところですが、スペックをみてみると、多少の改良や機能追加はあるものの、2016年に発売されたK-70の仕様と非常によく似ています。
印象としては「K-70のマイナーチェンジ版」というところですが、問題なのはその価格。
K-70は発売当初でもボディが7万円台で買えたのですが、KFは10万円越え。
K-70が持っていた「エントリー機並みの価格なのにすごい機種」という大きなアドバンテージをすっかり失ってしまった形での登場となりました。
価格に対する感覚
K-70は2016年6月頃に発売。それに対してKFは2022年11月に発売。
6年半ほど間隔があいているとはいえ、「K-70とさほど変わらないようにみえる機種」を出すのであれば、今回の価格帯はちょっと違うよなあと思ってしまいます。
どんなモノでもそうですが、モノには「出してもいいと思える価格」というものがあると思うのですね。
その感覚は人によって差異があるでしょうが、多くの方は「自分にとって価格に見合った価値があるかどうか」を考えて、出すか出さないかを決める流れかと思います。
そう考えてみると、今回のKFはどうでしょう。
「メーカーを応援する」という感覚を抜きにしてこの価格を考えると、「これはちょっと強気な価格設定すぎるだろ……」と感じる方が多いのではないでしょうか。
ちなみに私はK-70を所有しており、この機種のよさを体感していますが、それでも「マイナーチェンジ版と感じられる機種」に、10万円以上を出すのはちょっとなあ……というのが正直なところです。
仮にマイナーチェンジ版であっても10万円を越える価格にするのであれば、「これが目玉だ」と思わせる何かが必要だったと思います。
メーカーにしてみれば、カスタムイメージがそうしたものの1つなのかもしれませんが、正直、「この価格で買うユーザーがその機能に価値を見出すほど必要としているのかなあ?」という疑問もあります。
「結局は、自分で画像編集ソフトを使って好きなように仕上げるんじゃないかなあ」と思ったりもします。
エントリークラスの価格帯
今回のKFの件をみて、ああ、これで各メーカーとも本格的に「エントリークラスの価格帯を切り捨てる方向」に舵を切ったんだなあという思いが強まりました。
これから先は、以前のように広い層に売るのではなく、熱心なファンだけに向けた商売になっていくのかなあという印象も受けます。
そもそも、これまでのエントリークラスの価格帯――数万のカメラだって、数万のレンズだって、決して安くない価格なのにね。
その価格帯からカメラを知った私たちにとっては、なんともいえないさびしさがあります。
今回の記事で取り上げたカメラ
【PENTAX KF】
【PENTAX K-70】