前回の記事では「感想を分類だけでは終わらせない」と題して、感想とプラスアルファの視点についてお届けしました。
今回はその続きです。
決めつけないこと
写真を撮る、あるいは見ることに慣れてくると、多かれ少なかれ自分の中に自信がついてきます。
そうなってくると、ついビシッとした言葉で感想をいいたくなったり、自分なりの解釈を強く押し出したりしたくなることがあります。
確かに、作品に対してどんな解釈をするか、どんな感想を持つかは人それぞれですので、すべてが正解であり、間違いではありません。
こうしたことは、写真に限らず、いろいろなジャンルでいわれることですね。
ですが、ここで気をつけたいのは、あくまで「すべてが正解」――言いかえれば「人の数だけ正解がある」という点です。
そう、自分だけが正解ではないのですね。本であれば、その本を読んだ人みんなそれぞれに正解があるのですね。
- 自分の考えが、すべての人にとって正解ではない
ということです。
同様に「ほかの人の考えが自分にとって正解ではない」ことも十分にあり得ます。この点は非常に重要です。
決めつけと前提条件の話
私は本のレビューをみるのが好きなのですが、近年は「ちょっと気になる傾向があるなあ」と感じるレビューを目にすることがあります。
それは「決めつけ」から話を展開させるようなレビューです。
どのようなものかといいますと、たとえば
- 作者はこのように考えて書(描)いていると思いますが~
といった感じで、作者の考えをきめつけて、そこから話をすすめていくようなレビューです。
こうしたスタイルのレビューがなぜ気になるのかというと、「前提が前提になっていない」と感じることが多いのですね。
私が特に気になるのは、次のようなレビューです。
- 作者はこう思って書いたに違いない!
- →作者がそうしたいなら、このような展開にするべきだったと思います
つまり、自分が作者の考えを決めつけて、それをもとに話をすすめていくようなケースですね。
では、この方法の何が問題なのでしょう。
それは、「作者は本当にそう思っているのか?」という点です。
読者が「作者はこう思って書いたんだろうなあ」と考えるのは自由です。どんな感想・解釈をするかは、人それぞれですからね。
ですが、それはあくまで自分にとっての正解であって、すべての人にとっての正解ではありません。
もちろん作者にあっても同様です。
こうした場合、作者自身が発言したことをもとに話を展開するのであれば、何らおかしいことはありません。
が、作者が言ってもいないことを「この作者はこう考えているに違いない!」と勝手に決めつけて、それを前提に話をすすめていくのは違うと思うのですね。
なぜならその「決めつけ」はあくまでその人の感想であって、実際にはどうかはわからないからです。そう、前提として成り立たないのですね。
次回に続きます。