前回の記事では「味付けと俯瞰」と題して、カメラのオートモードについての考察をお届けしました。

今回はその続きです。
俯瞰のしやすさの問題
前回の記事では、スマホの画面はパソコンのモニターよりもサイズが小さいため「写真全体の把握がしやすい」といったことについて書きました。
これがパソコンのモニターになると、スマホの画面のようにはいきません。
画面が大きくなると、確かに迫力があったり、没入感が高くなったりはします。ですが、「写真全体のバランス」が把握をしようと思うと少し大変です。
画面が大きくなると、視点がどうしても一部分に集中するようになります。
常に全体を把握しようと思えば、自分が動いて画面から距離をとったり、あるいは画像を縮小表示するなどして、一時的に確認する行為を繰り返すことになります。
そう、スマホの画面のようにパッとみて「写真全体の様子がわかる」わけではないのですね。
それに対し、スマホの画面の場合は、手のひらサイズに写真全体が入るので
- 写真の細部ではなく、「写真全体」でみることができる
- 写真全体のバランスを把握しやすい
- 写真全体の印象がつかみやすい
といったことができます。
いわゆる「写真全体を俯瞰できる」わけですね。
仕上げにも影響する部分がある
スマホの場合
これは仕上げの作業を考える場合も同様で、スマホの場合は基本的に「写真全体」を俯瞰した状態で補正や加工ができるわけですね。
だから、補正をする部分も「全体をみて気になるかどうか」が判断基準になります。
仮に細かい部分でアラがあったとしても、写真全体をみて、特に気にならないのであれば、修正しなくてもOKという考え方が根底にあります。
また、スマホの場合は、最初からある程度「見栄えのするチューニング」がされた状態で写真データがでますから、さほど機械に詳しくない方でもそれなりの仕上がりにはなります。
デジタル一眼+画像編集ソフトの場合
それに対し、「デジタル一眼+Photoshopなどの画像編集ソフト」で仕上げる場合は、先に述べた通り、全体よりも細部に目がいきやすくなる傾向があります。
そのため、「写真全体の印象をつかむこと」が後回しになりやすい部分があります。
場合によっては、細かい部分の補正ばかりに時間をかけてしまい、「写真全体をみるとチグハグな印象」という仕上がりになってしまうこともあります。
このように、写真を仕上げる場合、デジタル一眼とスマホのカメラとでは視点的な面でも大きな違いがあります。
今回の例で挙げたように「散歩中に撮ったもの」を気楽に仕上げるのであれば、やはり仕上げがスムーズにすすむほうが嬉しいでしょう。
デジタル一眼を愛用している私自身も、ちょっとした写真であれば、できる限り早く仕上がるほうが嬉しく思います。
提示すべきだった点は
このように考えてみると、みえてくることがあります。
それは、誰もがどんな写真でもとことんまで補正や加工をしたいわけではないということです。「ちょっとした写真であれば、ちょっとした手間で仕上がるほうが嬉しい」と思うのですよね。
ところが今のデジタル一眼は、ちょっとした写真をそれなりに仕上げるだけでも
- 手間と時間、あるいは本気を求められる
など、ずいぶんと重くなってしまったように思います。
スマホのカメラに対して性能の高さをみせたいのであれば、エキスパート向けだけではなく、ライトな層にむけて
- オートで撮っても満足感が得られる写真が撮れる
- オートで撮ってもデジタル一眼のポテンシャルを感じさせる写りが体感できる
といった点を示すことができていれば、また状況は変わっていたのだろうなあと思います。