前回の記事では「本に載っている情報がすべてではない」と題して、写真の「撮影情報」についてのお話をしました。
今回はその続きです。
掲載されている情報を見直してみよう
写真の入門書や技法書を読むと、多くの場合、写真とあわせて撮影情報が記載されています。
どのようなカメラやレンズで撮ったかといった情報がわかります。
掲載されている情報は本によって違いはありますが、おおよそ次のような情報が掲載されています。
- 撮影したカメラ
- 使用したレンズ
- 焦点距離
- 絞り
- シャッタースピード
- 露出補正
- ISO感度
- ホワイトバランス
そう、先ほど例に挙げた「色合いの設定(調整)」に関する項目がないんですね。載っている書籍があったとしても、ごく稀です。
つまり、本に載せている情報だけで仕上げているわけではないということです。
だから、本と同じ状況で撮っても、同じような写真にはならないのですね。
そう、掲載されているデータには、「味つけ」や「どう仕上げたのか」の部分がないためです。
なぜ載せない情報があるのか?
では、なぜ「味付け」や「どう仕上げたのか」といった情報を載せないのでしょう。
これには主に次のような理由が考えられます。
入門書や技法書の性質
1つめの理由は、入門書や技法書の性質です。
入門書や技法書は、あくまで掲載されているカリキュラムを学ぶためのものです。
たとえば「露出」の項目であれば、その性質や操作方法、使いどころなどを読者に伝えるのが目的です。
そして作例は、その項目に書かれている要素が入った例です。
わかりやすくいうと、
- 露出の設定のほかにもいろいろやっているけれど、ここでは露出の部分に注目してね
というものです。
絵でいうところの「模写するためのもの」とは性質が違うということですね。
スタイルに関する問題
「味付け」や「どう仕上げたのか」といった情報を載せない理由の2つ目は、撮影スタイルの問題です。
「味付け」や「仕上げ方」は、作者の持ち味が大きく出る部分です。写真の個性や作風に大きくつながる部分ともいえるでしょう。
これらは、多くの場合、独自のもの、独自のノウハウで成り立っています。それをポンポンと公開してしまったら、どうなるでしょう。
そう、その人の持ち味や個性、作風が独自のものではなくなってしまいます。
特に、ソフトを使った仕上げの場合は、操作をマニュアル化できてしまう恐れがあります。つまり、同じ操作をすれば、誰でも同じようにできてしまうわけですね。
今はネットの時代ですから、こうしたマニュアルが一度出てしまうと、多くの人に共有されて一般化されてしまう可能性があります。
そうなってしまうと、その作家あるいは作者にとっては死活問題ですので「掲載しない」という選択肢が出てきます。
情報の形式
掲載される撮影情報に関しては、「昔からこうだったから」という点も考えられます。
「撮影情報にはこんな情報を載せるんだ」という「様式」のようなものですね。
今はとかく情報が多い時代ですから、つい忘れがちな点ではありますが、本来は、使用機材や焦点距離などを知れるのは、ものすごいことなんですよね。
次回に続きます。