前回は「色合いと現実との関係 その1」と題して、色合いの調整と現実との距離感についてお届けしました。
今回はその続きです。
「くすんだ色やカゲが飛ぶ」ということ
前回の記事ではハイキーの写真を例にして色合いと現実との距離感についてのお話をしました。
現実の明るさよりも、あえて明るく撮ることで、色がポップにみえる、かわいらしくみえるようになるという手法です。
が、この手法にはいくつかのデメリットがあり、その1つに「モノの質感を消してしまう」という点があります。
――と、ここまでが前回の記事でお話をした部分です。というわけで、今回はその続きからです。
質感が消えたのはなぜ?
さて、その「質感」ですが、何が原因で消えてしまったのでしょう。
それは明るくした際に飛ばした「くすんだ色」や「カゲ」です。これらはモノの質感を重要な要素であります。
たとえば、白いTシャツを着た人がいたとします。
現実であれば、Tシャツを着れば、そのTシャツにはところどころシワが入ります。よほどピチピチのTシャツでなければ、それほどキツいシワは入らないでしょう。
すると、そのシワの近辺には、カゲが入る部分が出てきます。また、人間の体は平面でありませんので、体の凹凸や位置によってカゲになる部分もあるでしょう。
さて、この白いTシャツを着た人をハイキーで撮ったとしましょう。
すると、Tシャツの白が実物よりも明るくキレイにみえるようになりますが、多くのカゲが飛んでしまいます。
キーの上げ方やシワの入り方によっては、シワがなくなり、表面がツルツルの服のようにみえてしまうこともあります。
また、質量も感じられなくなるので、重さがなく、軽くみえたりもします。
すると、Tシャツを着ているはずなのに、なんだかウソっぽい……。そんな写真にみえてしまうわけですね。
現実との距離
上で挙げたのは1例ですが、「くすんだ色」や「カゲ」は質感を表すのに重要な役割を持っているのですね。
ハイキーにすると、やればやるほど「明るさ」「色」「質感」が現実から離れていく――この点は非常に重要なポイントです。
逆にいえば、この性質は夢のような世界を演出するのには大きな強みともいえます。
このように考えると、こうした手法は使いどころを考える必要があることがわかります。
さて、今回のお話のきっかけになった露出補正が高め&カラフルでポップな色合いのテレビCM
。ここまでの話を踏まえて考えてみると、みなさんの目にはどう映るでしょう。
▼写真の本ではありませんが、光と影を知るのによい本です。
写真にも生かせる知識や考え方がいろいろと学べます。