写真のタイトルのつけ方で悩んでいる人は、ぜひこの点を押さえてみてください。タイトルは「固定化したイメージにとらわれすぎない」のが大きなポイントです。
タイトルは「固定化したイメージ」にとらわれない
写真の題名をつける際に気をつけたいのは、ズバリ「固定化したイメージ」にとらわれすぎないということです。固定観念といってもよいかと思います。
セミの写真のタイトルを考える
たとえばこの写真を見てみましょう。
この写真に写っているのはアブラゼミです。アブラゼミといえばぱっと思い浮かぶのが「夏」という言葉だと思います。
ですので、つい「夏に関連するもの」や「夏から連想するもの」でタイトルを考えてしまいがちですが、ちょっと待ってください。
この写真は「夏らしい」ですか?
この写真を撮ったのは、8月のものすごく暑い日でした。でも、写真を見るとセミ以外は夏らしい要素がないですよね。全体としても「いかにも夏!」あるいは「夏の1コマ」というイメージではないですよね。
ということはこの写真を「夏」という観点でみると
・「夏の写真」としては成り立っていない。
・「夏の写真」と言うにはパンチが足りない。
と考えられます。
つまり、そういう写真に「夏」から連想する言葉を入れても、タイトルとしては合っていないということです。
どれだけ頭をひねって考えても、根本的に夏らしくない写真なわけですからズレたものになる可能性が高いということです。
「セミ=夏」というイメージにとらわれすぎると、難しい例です。
夏の風物詩のタイトル
今度はちょっとへんてこな写真です。
前方にいるのはアブラゼミ、後方にいるのはクマゼミです。うつむき加減のクマゼミがアブラゼミのほうへ手を伸ばしています。
シチュエーションが大変ユニークなので、この写真のタイトルはつけやすそうですよね。さて、みなさんはどんなタイトルをつけますか?ぜひ考えてみてください。
シチュエーションに注目してタイトルをつける
上の写真をみてタイトルを考えてみた方の多くは、シチュエーションに注目してタイトルをつけたことと思います。
・アブラゼミとクマゼミが歩いている、または競争していると見立ててみる
・クマゼミの伸ばした手に着目してみる
・しゃきっとしたアブラゼミと背中が丸く見えるクマゼミの姿勢を対比させる
こうした点をポイントにタイトルをつけた方が多いのではないかと思います。ユニークな題名を考えた人もいるのではないでしょうか。
ここで大事なことは、こういう写真であれば「セミ=夏」というイメージに固執することなく、シチュエーションでタイトルをつける人が多いということです。
実はこれこそがタイトルをつけるのに大切なことで、写真に気持ちをこめて撮る人ほど、つい自分が撮った主役のイメージに引っぱられてしまいます。
ですが、写真を見る人にとっては「どう見えるか」なのです。
「どう見えるか」でタイトルをつける
実はこの写真を撮ったとき、こんなことを思っていました。
うわ、こんな近くでクマゼミを見たの初めて!
そう、写真を見て感じる印象とは全く違うことを思って撮ったのです。
でも、どう見てもそんな思いで撮った写真には見えませんよね。ということは、この写真はそういう写真ではないということです。
ですので、この写真に「クマゼミをそばで見たこと」に関連したタイトルをつけても、見る人にとっては「?」となってしまうでしょう。
もう一度振り返ってみましょう
この写真、年老いたクマゼミじいさんが「待ってくだされ、お若いの」と言っているふうに見立ててもいいですし、バテ気味のクマゼミが「み、水をくだされ・・・」と言っているふうに見立ててもおもしろい写真ですね。
セミから距離を置いた写真になったことで、状況に目がいき、それに合わせたタイトルをつける。そうしてタイトルをつけた方は、どなたもいいタイトルになっているかと思います。
なぜなら写真を見て「まさにそう見えるから」でタイトルをつけているからです。
つまり、
・追いかけっこしているように見えるから、それをタイトルに。
・クマゼミが手を伸ばして何かを言っているように見えるからそれをタイトルに。
ということを、みなさんは自然にしているということです。
この写真はこう見えるからこのタイトル。これこそが、その写真にぴったりなタイトルです。絵画で言うところのモディリアーニの「おさげ髪の少女」的な「この作品にはこのタイトルしかない」というタイトルです。
固定化したイメージにひっぱられない
今回の写真で「クマゼミ=めずらしい」「クマゼミ=真夏」という固定化したイメージでタイトルをつけた人はほとんどいないかと思います。
1枚目のアブラゼミ単独の写真の場合は、アブラゼミがクローズアップされていることもあって、写真全体の雰囲気をみるよりも「セミ」を軸に考えてしまいがちです。
ですが、2枚目のアブラゼミとクマゼミとの写真になると、ちょっと距離を置いている分、「この写真、こんなふうに見えるなあ」と考えられます。
そう、写真のタイトルをつけるのに大切なポイントはここです。どんなに凝った言葉でも、どんなに美しい言葉でも、その写真に合っていなければタイトルとしてはしっくりこないものになってしまいます。
上の写真を撮ったあと、アブラゼミは飛び立ってしまいました。上のアブラゼミ&クマゼミの写真とこの写真は、8月のものすごく暑い日に撮ったもの(気温が37度を越える猛暑日)です。
ですが、写真をみてもその暑さは伝わってきません。つまり、撮影した本人にとっては「猛暑の中」ですが、写真を見る人には「猛暑の中ではない」ということです。
なので、タイトルに「猛暑」に関連する言葉を入れても、見る人にはしっくりこないことと思います。
「ローカル鉄道=さびしい」のか
以前、あるところで見たローカル鉄道の写真でこんなことがありました。
花畑のむこうに小さくローカル線の電車が写っているのですが、その写真の大部分を占めるのはいっぱいの菜の花。電車自体も明るい色で元気なイメージです。
ですが、解説には「ローカル鉄道のさびしさを表現した」とあり、タイトルもさびしい感じのもの。ぱっと見て大変にちぐはぐなものでした。
写真を撮っていると、主役にインパクトがあればあるほど、主役に目がいってしまいます。ですが、一歩ひいてみて「全体ではどういう雰囲気にみえるのか」と見ることも大切だと思います。
この例の場合でしたら「ローカル鉄道=さびしい」が固定化されたイメージにあたります。ですが、ローカル鉄道さえ撮ればさびしいというわけではありません。
そう、今回の記事でお話してきた「セミを撮ったからと言って夏らしいというわけではない」ということですね。